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桑島薫 写真展「light, shadow, turn, shadow, light」2019/12/5~11

写真展「light, shadow, turn, shadow, light」(2019/12/5~11に開催)は、フォトグラファー桑島薫さんが2015~2019年に渡り、記録撮影で携わっている「京焼今展(きょうやき・いまてん) 」[後述する]という焼きもののプロジェクトをきっかけに撮られた写真の展示です。大阪から「京焼今展」の活動拠点である建仁寺塔頭両足院へ向かい、ある日は窯元の工房を訪ね、そしてまた祇園の街を歩いて大阪へ戻るという行き来を繰り返す中出会った光と影を切り撮った写真だそうです。タイトルはその「繰り返された行き来」を表しています。

 

(展示作品)

(展示作品)

 

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(初日のレセプションパーティーの様子)

 

両足院や焼きもの作家達の工房には独特の静けさや、人の動きや振る舞いを自然に変えてしまう「空間が持っている力」があると彼女はいいます。確かに写真にはその「空間力」が捉えられているからこそ、観る人の呼吸を整え背筋をスッと正してくれるような力があるように思います。

 

(展示作品)

(展示作品)

 

また、両足院や工房にいる間、彼女は感覚が研ぎ澄まされるといいます。普段は大阪の喧騒にマッチングされたご自身の波長を、ラジオのチャンネルを回すようにその場に合うようチューニングする感覚があったそうです。ある日訪ねた絵付け作家の静かな工房で、平安の雅を感じながらシャッターをきっていたのにふと外に出ると賑やかな女子高生が目の前を横切って現実に戻ってくる・・・作品の中には道を行く数人の女子高生の写真があるのですが、彼女が感じたそのギャップを想像しながら写真を眺めるのもすごく面白いと思います。

 

(展示作品)

(展示作品)

 

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(レセプションパーティーの様子)

 

「伝統文化」と聞くと懐旧の念を覚えがちですが、継承してきたものをベースに常に時代を象徴する新しいものを生み出す躍動的なエネルギーの中にあり、この今も新鮮で生き生きとしているものなのだと、お話を伺っているうちに認識が変わりました。彼女は両足院で器やお茶会を撮るとき、工房で作家の艶やかな指先を撮るとき、「息を潜めて撮っていた」そうです。そういう状況から、奥深い静寂を感じながら新たに伝統を紡いでいく京焼のこの瞬間を撮り残す緊張感と、誰もが触れられるわけではない伝統文化の向こう側へ立ち合うことに高揚する気持ちと共にシャッターを切っていた様子が想像され、聞いている私の方まで少し興奮してしまいました。

 

 

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(会期中の2日間は中国茶・台湾茶でのおもてなしと、1日はお茶会があった。この写真は“茶絲道” 堀口一子さんのおもてなし。)

 

(中国茶の急須とお茶碗)

(中国茶の急須とお茶碗)

 

(堀口さんのおもてなし)

(堀口さんのおもてなし photo by shido koike)

 

撮影中は「自分がどう感じているかを撮るときもある」とおっしゃっていましたが、よく多くの人がするようにスマートフォンで日常的にパシャパシャと目の前のことを簡単に記録するのとは違って、その場の空気や情景、自分の感じていることに集中して撮るという行為は深い瞑想に似ているとも思い、あるいはとても神秘的にすら感じます。だからこそ、その場のしんしんとした空気感や普段見落としがちな自然の美しい陰影を収めたり、今も息づく伝統文化に深く迫った写真が撮れるのだと思います。

 

(中山福太朗さんのお茶会)

(中山福太郎さんのお茶会)

 

お茶室

(お茶会のために用意された茶室空間『茶の湯、switch』)

 

(TE tea and eating 川西万里さんの台湾茶のおもてなし)

(TE tea and eating 川西万里さんの台湾茶のおもてなし)

 

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(川西万里さんと来場客)

 

桑島さんはこのプロジェクトにあたり、焼きものを見つめ学ぶべく、前述の通り作家の工房や「多聞会(たもん・かい)」[後述する]という勉強会へも積極的に足を運び写真を撮りためて来られました。また、これまでにも茶道に触れたり、“ハレとケ”を学ぶべく農家さんを撮りに行っていた経緯もあります。工 房では焼き物の知識や歴史を学ぶだけでなく、例えば作家の一連の動きの中でここぞという琴 線に触れる瞬間を捉える眼を養い“自分のフィルター”ができあがっていったことも収穫だったそうです。様々なところへ通って見て聞き、伝統文化に触れてきた彼女だからこそ掴んだとても繊細で微妙な感覚なのだと思います。

 

(展示作品)

(展示作品)

 

(桑島薫さん)

(桑島薫さん photo by kazushi matsumoto)

 

私は今回の取材を通して桑島さんのかなりのファンとなりました。被写体をただ対象物として捉えるだけでは撮り得ない、彼女だけのフィルターを通してこれからも生み出されていく作品にまた出会えることが楽しみです。

 

Artist Statement

2015 年 3 月、ようやく春めき始めた頃だった。「京焼今展て活動知ってる?そこで記録撮影できる人探してる んやけど興味ない?ぴったりだと思うのよ。」いつも濃いご縁を下さる写真家の大先輩、MOTOKO さんから の連絡があり、私は二つ返事でこのプロジェクトの撮影を引き受けた。その後 4 月、多聞会と名付けられた勉 強会から撮影が始まった。

その頃お茶のお稽古を始め、やっといわゆる日本文化なるものを愛でるだけではなく、実際に小さな一歩足を 踏み入れたその頃の私には、願ってもない機会だった。私は短大卒業後4年程海外で生活をしたことがある。 それまでの私は香川の田舎出身で雑誌だけが全ての情報源であり、映画にときめき、早く日本の外を見てみたい と外国に憧れる少女だった。それが一転、米国で英語に不自由がなくなった頃、日本語の活字に飢え、手にした 純文学がきっかけで帰国を決意する。「この世界観は日本じゃないと撮れない」単純にそう思ったからだった。 例えば雨の呼び方が何通りもあり、七十二候に細分化された暦、季節を先取りする着物の柄、土地の気候と密接 に関係し生まれたあれこれ。それに浸かって生活し、写真が撮りたかった。それが実現したのが、このご縁のおかげだった。

大阪から京都へ、街を歩き、京焼今展の活動の拠点の場である両足院さんへ、ある日は窯元へ、そしてまた街 を歩いて大阪へ戻る。その繰り返しをひたすら続けた。伝統文化や焼きものは好きなだけでもちろん専門では ないので、通って見て聞いて撮るしかなかった。行き来する中、ふと空気や光の質が変わるのを感じた。あい まいなようできっちりと、目には見えないけれど境界線があり、そこを越えるとき自然と礼をしたくなった。 よろしくお願いします、ありがとうございます、そういう気持ちにさせる不思議な力がある。こんな風にして 脈々と暮らしてきた人の息吹を感じて自分もそうしてしまうのかもしれないなと思った。 そして手。其々の仕事の中で手は一番の道具である。儀式的な美しさを見せてくれる瞬間。長い繰り返しの中 で作り上げられた所作、佇まい。土がどうなりたいのか声を聞き形作る。手先から出てくる瑞々しいミラクル は、土や時の積み重ねに作らされているように感じた時もある。それを写真に収めたかった。

かつて憧れた陰影礼賛を懐古するのではなく、今を、今の空気、光を。目には見えない時の積み重ねをこれからも。

 

桑島薫

フォトグラファー

1979年香川生まれ。スナップ好きの母と映像に影響を受け写真を始める。短大卒業後、単身渡米。サンフランシスコAcademy Art Universityにて写真を学ぶ。現在は関西を拠点に作家活動、雑誌・広告写真と共に、近年は地域や作り手の魅力を伝える撮影に携わる。主なプロジェクト、滋賀県「MUSUBU SHIGA」、向日市「むこう、むこう」、Google Cultural Institute「日本の匠」、阪急うめだ本店「SOUQ ZINE」など。主な作家活動に「農家アート」、瀬戸内国際芸術祭’13 graf 記録撮影、「京焼今展」などがある。

 

 

京焼今展と両足院

京焼今展は、“いま”という時代を象徴するやきものを探求し、“これから”を創造していく 場です。参加する作家それぞれが培ってきた個の力を活かしつつ、「京都のやきもの」という枠組みで協働することで、やきものの未来を切り拓く試みがなされています。
活動の拠点である建仁寺両足院は、かつて禅僧を中心に、陶工や画家など様々なジャンルの文化人が集い、伝来する数々の名品に学びつつ、その時々の文化を創造していくサロンのような役割を担う場所であったそうです。このような文化を育んできた場で、新たなやきものの創生、ひいては京都の文化の一端を担うような取り組みが行われています。

https://www.facebook.com/modernkyotoceramic
http://www.modernkyotoceramic.com

 

多聞会

京焼今展の活動では、毎年テーマを一つ設け、春~夏にかけ「多聞会」と呼ばれる一般に開かれた勉強会やワークショップがほぼ毎月行われています。本展のテーマについてじっくり取り組み、掘り下げ、解釈を試み、作陶へと結びつけるきっかけを生み出す場となっているようです。参加作家は、京都を拠点にする、30~40歳代の焼きもの作家で、代々続く焼きものの家の後継、 現代美術の作家、時に大きな窯元に勤める職人もいち作家として参加されるそうです。
今まで開催されたテーマは、京焼、琳派、伊藤若冲、茶、禅的思想などで、講師はテーマによって大学教授や研究家、美術館や博物館の学芸員、茶人から庭師まで幅広くいるそう。作家はここで得た知識を作品に昇華し、9月頃から制作に入り、11月に両足院にて展覧会を迎えられます。

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