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SAE FUJITA 「ハード/ソフト」2021/1/15~29 回想録

 

実物を見ても波打った布だと思っていたものは薄く焼かれた陶器でした。

ここに並ぶ何やら機械的な意味の取れない文字の羅列は、彼女が描いたドローイング作品をアスキーアートに変換するフリーソフトを使って文字化したものです。

通常アスキーアートといえば、文字を1つのドットとみなし絵にする手法や文字の形を線とみなし連結して描くものです。(^_^)というような顔文字もアスキーアートの一つです。

今回は文字を組み立ててドローイングを描くのではなく、ドローイングを文字で表現するとどうなるか、フリーソフトに解釈させて描いています。

もともとここ3年くらいはドローイングをアスキーアートに変換する試みを繰り返しアートブックを製作していたそうですが、この作品はシルクスクリーン(版画)で陶器にアスキーアートを写すことで、波打った部分がドローイングに見えたり、平面部分が文字の羅列に見えたりすることに面白みを感じて制作したそうです。

 

こちらのシルクスクリーンの作品は、黒地に白インクの版画が刷られています。もともとは手のひらサイズの小さなドローイングを大きく拡大しているそうです。近藤さん自身のように体の小さい作家さんが、大きい絵を腕を伸ばして弧を描きながら作品を作っていくのと、手首の先で描いた小さい絵を大きくするのとではニュアンスに違いがあるはず、そういうところに着目したと伺っています。

シルクスクリーンの版にとても細かい目のものを使うことで、遠くから見ると焦点の定まらないような不思議な感覚を伴うボヤッとした絵となっていますが、近寄って見ると細かいドットの集積だと分かります。そして間近では四隅に小さく印刷されたドローイングに気が付きます。

距離感で明らかに異なる見え方があって面白い作品です。

 

こちらのシルクスクリーンの作品は、何かモチーフを描いたようにも見えますがそうではありません。普段何か具体的なものを描くことはないそうです。スキャンして取り込んだドローイングをわざと何かに見えるように組み立て、モチーフが絵の見え方にどう影響するかを実験的に製作したそうです。

下の作品は見る角度で色の変わるインクを使っていて、背景が濃淡あるシルバーやパープルなどに見えるのも面白いです。

鑑賞者はつい、何が描かれているか明確な答えがあると思いがちですが、ドローイングの「形」に目的や意味がはっきりとあるわけではないようです。作者が何を自分が描いていきたいのかを追求する中での途中経過が作品になっていたり、感覚的に面白いと思ったものを製作したりというように・・。

ドローイングをシルクスクリーンにする時は、版を作るために絵を分解する作業が発生しますが、絵の分解自体に面白みが沸いて、色んな分解方法を試しているそうです。また、基本的には紙の地の色を背景に使わないなどと独自ルールを設けたり、できるだけ少ない版数で複雑な構造に見せようと試みているそうです。今後も繰り返される実験的な作品にお目にかかれるのが楽しみですね。

アーティスト/藤田紗衣:

1992年京都府生まれ。2017年 京都市立芸術大学大学院 美術研究科絵画専攻 版画 修了。版によってあらわれるイメージに着目し、シルクスクリーンやインクジェットプリントなどの複製技術を用いて、平面作品、アートブックを制作しています。本展覧会ではシルクスクリーンによる平面作品や、近年取り組んでいるセラミックの作品を展示。
https://sfjt.pw/

 

 

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